【イベントレポ】第15回学校図書館のつどい(1)
ども。librarius_Iです。どうぞよろしくです。図書館クラスタは「はてな」推奨らしいので,はてなに帰ってきました*1。
今日は,専修大学で行われた,第15回 学校図書館のつどい〜生きた学校図書館をめざして〜に参加してきましたので,詳細な(すぎる?)レポを書いてみたいと思います*2。
なお,以下の記録は私が私的にとった記録ですので,公式の記録ではありません。よって,間違いや勘違いなどが含まれている可能性が十分あります*3。その点をどうぞご留意の上ご覧下さいませ。
はじめに 日本子どもの本研究会*4
会議の特徴として,司書教諭,学校司書,市民の中で学校図書館に関心のある方,読書ボランティア,子どもの本の研究をしている方など様々な方が参加している。学校図書館が生き生きとするためには人が必要である。学校図書館の日常的なサービスを行う学校司書の配置が重要であるが,実際に仕事をされている人からみれば,勤務時間や労働条件は問題を抱えている。公立図書館では民間委託が問題になっているが,そうした問題が学校図書館に波及しかねない状況である。全ての子どもたちに含まれる,特別なニーズを持った子供や,外国語が母語の子どもに対してどうしたサービスを提供するかを野口先生から講演を行っていただく。午後からは,現場で切実に求められている学校司書と司書教諭の連携の報告がある。その後時間の許す限り交流を行いたいと思う。
すべての子どもを支える学校図書館〜その歩みといま〜野口武悟先生(専修大学)】
特別なニーズを持つ子どもたちに学校図書館がどうするべきかその歴史を述べる。
はじめに
4年前に2007年度から本格スタートした「特別支援教育」,特殊教育から特別支援教育へと移行した。
今や校種を問わず,サポートする必要がでてきている。よって,全ての学校図書館が特別支援学級に向き合う必要がある。ユネスコ1999「通常の図書館サービスや資料の利用ができない人々に対しては,特別のサービスや資料が用意されなければならない」→インクルージョンへの対応。日本でも,特別支援学校や特別支援学級ではなく,普通学級で学びたいというニーズがでてきた。これまで特別支援学校を研究してきたが,一般の学校でのこうしたサービスを考える必要がある。こういった課題は新しい課題のように見えるが,実は先人たちが追求してきた課題である。1950年頃には読書問題児への指導が話題になっていた。なぜ,1950年代という時代になぜ取り組まれていたのか。そこから今に生かせるヒントはないか。今日の話は1950年代の話が中心となる。
話の中心は小中学校での学校図書館が中心である。特別支援学校の話をすると話が広がりすぎるため除外する。今日ではふさわしくない用語があるが,歴史の文脈で,そのまま取り上げる箇所があることを了解されたい。
1950年前後の学校教育の状況。
戦後教育改革
- 現行学校教育制度の構築期
- 旧制の学校から新制学校へ
- 中学校が新しく誕生。小学校と合わせて義務教育となった。
- 旧制の学校から新制学校へ
- 教育課程・内容は経験主義カリキュラム
- 「社会科」の新設(初期社会科)
- 今日の社会科のように暗記科目ではなく,当時は問題解決型,体験型の学びの重視。(初期社会科)
- 調べる場としての学校図書館が不可欠
- 学校,教師の裁量の幅が大きい。
- 「社会科」の新設(初期社会科)
- 厳しい学校環境
- 戦後復興に取り組む各自治体の厳しい財政事情(自治体の大合併がこの時期に起こっている)
- 特に,中学校の新設が重くのしかかる(小学校との同居も)
- 教育にかける熱い思い
しかし,学校教育法施行規則に定められていても,学校図書館は誰が担当するか,財政的な基盤をどうするかが明確にされなかった。この課題を解決するために,学校図書館に関する単独法を作る動きがあった。(学校図書館法制定運動)
- 「学校図書館法」公布(1953年8月,翌年4月に施行)
- この法律で,第5条司書教諭,財政基盤としては2分の1国庫負担が定められた。
- 学校図書館審議会にたいする規定
- 実際には司書教諭の配置は棚上げとなった。
- 蓋を開けてみれば,弱い法律であった。
障害児教育も制度化
「読書問題児」とは何か
「読書問題児」という枠組み
- 通常学級に受け入れられていた軽度障害児の多くは,学習面で困難を抱える。当時の文脈では「学習問題児」という言葉が使われていた。問題があるから排除しようという使い方ではなく,救おうとする動きが中心である。
- 特に,読みの困難は全ての学習に影響するだけに,大きな課題として,学校図書館を含む学校全体の取り組むべきテーマの1つとなる。
- 「読書問題児」という枠組みのもとでの支援(読書治療,治癒的指導)
読書問題児の類型化
- 読書困難児(読書能力問題児)・・・読書遅滞児,読書不振児
- 読書異常児(読書行動問題児)・・・読書早熟児,読書偏見児
- 読書遅滞児とは
- 知能が低い
- 学業成績が芳しくない
- 身体的欠陥があること(感官,発声器官の故障,虚弱,神経質)
- 非社会的で,孤立していること,発表を好まないこと
- 環境が恵まれない
- 読書不振児とは
「読書遅滞児とともに,読書能力問題児であるから,この二つは両方とも読めない子どもなのである」
読書困難児は読書能力そのものに障害が疑われるケース
「読書問題児」登場の背景
学校図書館における「読書問題児」への対応*5
- 全国学校図書館研究大会研究集録
- 第3回大会(1952年)から,「読書問題児の指導」等の分科会を中心に学校図書館における「読書問題児」への対応が議論される。
- 第13回大会以降は「読書問題児」に関する議論はほとんどみられなくなる。
- 代わりに,第14回大会(1964年)以降は「特殊学級における読書指導」の分科会が設けられる。
- 総括がされないまま議論の俎上から消えていった。
そうなった背景として
- 1960年代,文部省の改革もあり特殊学級が急増すると「読書問題児」=通常学級の軽度障害児の対応は学校図書館を含む学校全体での実践課題から特殊学級での実践課題へと集約されてしまったこと
- 同時期,学校図書館自体が停滞気味になってしまったこと
実践事例報告(1):東京都瑞穂町立瑞穂中学校(1952年)今村秀夫の実践
実践事例報告(2):千葉県市川市立真間小学校
実践事例報告(3):山梨県睦合村(1954年)
- 状況が50年前と変わっておらず悲しい。
- 毎年のように色んなところで実践報告がでてきている。特定地域に限られたものではない。
現在
「読書問題児」への対応とは何だったのか
「読書問題児」への対応の課題は