リブラリウスと日々の記録(はてな版)

研究とかイベント運営とかの記録を淡々と。

【2020年度版】卒業する学生さんへ。

こんにちは。今井福司です。

去年の今頃、こんな記事を執筆していました。

librarius.hatenablog.com

新型コロナウイルス感染拡大防止のために、2019年度の本務先の卒業式は中止となり、卒業する学生さんへ急遽エントリを書いた次第です。

さて1年経ってどうなったかというと、本日時点でも1都3県には緊急事態宣言が出ており、学位記授与式は行われているものの、かなりの制限をかけて、学部ごとに分散開催をするなど、キャンパス内に滞留しないようにして、細部に至るまで注意して開催されている状況です。

www.shirayuri.ac.jp

昨年同様、司書課程の学生さんへ大学発行の司書免許状を手渡しするイベントは行われず、卒業生の学生さんにコメントする機会というのがないという状況が今年も生じてしまいました。

昨年同様、卒業する学生さんへ「おめでとう!よかったね」とお祝いするチャンスがないことや、何か一声かけられないこと、様々な事情からいろいろなことが困難になった旨は重々承知しております。そしてこちらが単位認定をして、資格を取り終えた学生さんに何かコメントするのは、もしかするとただの蛇足であり、教員の自己満足にしかならないのではとも思います。

ただ今年も何らかのメッセージを伝えられればと思い、昨年書いた文章に少し手直しをしてブログで公開したいとおもいます。

現在の大学に着任して、最初の年からほぼ同じ言葉を卒業生の皆さんにかけています。

「大丈夫、もっと自信を持ちなさい」

司書課程を受講するを含めて、私の授業を取る学生さんは虚勢を張る人がほとんどおらず、「私は全然出来ないですから…」と謙遜している学生さんを何人も見てきました。もちろん、謙虚でよいと評価する方もいらっしゃるのかもしれませんが、私から見ていると、「本当は出来るのにもったいないなー」と感じていました。

司書は年間1万人が新たに取る資格で、様々な言われ方をしますが、少なくとも私自身は受講したからには、何か新しい観点や道具を手に入れてもらうつもりで、授業に臨んでいます。完璧にその意図が達成されるのは年間数えるほどしかないのですが、それでもちゃんと授業に出席している学生さんには、何か一つでも伝わればと思って授業を展開しています。

司書教諭は取得のための単位数がどうしても増えてしまうことから、取り切れる学生さんは多くはないのですが、それでも毎年少しずつ教職とともに司書教諭の資格を持って卒業する学生さんが出ています。司書と同じようになにか新しい観点や道具を手に入れてもらうつもりで授業を行っています。特に学校教育であれば、それぞれの児童・生徒にあった教育方法や手段があるはずですから、学校図書館を活用した教育にフィットする児童・生徒に将来あったときに対応できるようにと思い、授業を展開しています。

ほんの小さな進歩でしかないかもしれませんが,司書・司書教諭課程を取る前と今では何か違うものが身についた、もしくは何かを身につける環境が整ったと、少なくともそう私は考えながら、一人一人の単位認定をしています。確かに上を見ればキリがありませんが、それでも「自信を持ちなさい」と言う言葉は空手形ではなく、私としては根拠を持ったコメントだと考えています。

謙遜して下さった学生さんの仰るとおり、大学で学んだだけでは十分ではないのは確かです。司書・司書教諭の第一線で活躍する人たちは、知識や技術を常にアップデートし、出来ることの幅を日々広げています。一度勉強したから十分ではなく、何度も学び直して何度もやり直す必要があるのは、資格としては少々面倒な資格かもしれません。

でも図書館という場所は学び直したり、やり直したりするのにはもってこいの場所です。その使い方や活用例を司書・司書教諭課程を通じて、学生さんは数多く見ているはずですから、皆さんは初めて図書館を使おうとする人より、ずっとアドバンテージがあると私は思います。

もちろん資格を取っただけの知識やスキルが身についていることは当然かもしれませんが,仮に全く違う仕事に就いたとしても、私が授業したことで、いざ図書館を使おうとしたときの抵抗感や煩わしさのようなものが少しでも減らせたのであれば,これ以上の幸せはありません。

そして私の専門とする学校図書館にもし関わろうとする学生さんがいるのであれば、その抵抗感を減らす仕事は、今度は皆さんがやるべき仕事であることを強く認識してもらえれば幸いです。

今年1年間はオンライン授業で顔も合わせられなかったのは、とてもとても残念です。ただ特に司書教諭を目指す学生さんにとっては、オンライン授業や遠隔授業がどんなものなのか、どんな準備が必要なのかを自分の体験として身につけられたことは、きっとこれからの活動に対してプラスになると考えます。

大学教員としては,もっといろいろなことを書いておきたいと思うのですが,説教になるのも嫌なので,毎年と同じメッセージを書いて終わりにしておきます。

「大丈夫,もっと自信を持ちなさい」

皆さんのご活躍とご多幸を心よりお祈り申しあげます。

この度はご卒業まことにおめでとうございます。

2021年3月16日(火)

今井福司