【イベントレポ】大学図書館と学術出版社の連携:電子学術書利用実験の提案(2)
「電子学術書配信プラットホームについて」
京セラコミュニケーションシステム
今回実証実験のシステム担当となった。
実験に参加した理由
- 97年からインターネットのデジタルコンテンツ配信を行っている。
- 今までのビジネスの融合が目的
モバイルサービスを取り巻く環境
- キャリアのみの課金システムがオープン化されつつある。
- 高機能化する端末の普及
- ユーザーによる価値の創造
- ロングテール
- 初期投資の低コスト化
- デジタル放送に対する電波帯域の割り当て
- 市場の変化に対応したサービスの提供が必要。
(新しい)モバイルサービス
- 出版系コンテンツ配信
- 行動履歴に基づくターゲティング
- 放送波によるデータ配信
実証実験の目的
利用イメージ*1
- 紙資料については,まずPDFのデータで受け取る。
- 画像を取り出した上で,提供用データに変換する。
コンテンツ保護
- ユーザー認証システム
- 定期的にアクティベーションをおこなう。
- ダウンロードの際に認証
- ダウンロードコンテンツはコピーしても閲覧できない。(閲覧時に復号化して閲覧させる)
- ダウンロードコンテンツは一定期間経過後,閲覧できなくなる。
オープン化・マルチデバイス連携→今後追加したい
- 大学でモバイル端末,自宅ではPCで閲覧
- 大学でマーキングしたものを自宅で復習する。
- 場所端末が変わっても同じものを提供していきたい。
「電子学術書利用実験ーオーサリング・ユニット」
実験参加にあたって
- 学術出版の新しい流れを作りたい
- 出版社(創る側)と大学(利用側)共同の実験は画期的
- 出版社検証の場として
- 紙の書籍の代替なのか
- ハイブリット出版なのか?
- ボーンデジタルなのか?
- 大学検証の場として
モデル
- ワンソース・マルチユース
- プリントオンデマンドを加えていきたいと思っている。
検討項目
- ワンソースマルチユース
- DTPデータから構造化タグ付きデータへの変換
- 底本スキャンによるデジタル化
- 紙の本しかないものをどうするか
- デジタル化コスト
- デジタル教科書
- リッチコンテンツ,我々としては一番やってみたい。
あるべき姿として
- 出版社が作られた多様なメディアを利用者にネットで届ける
- 許諾をいただいた電子資料を大学の学内で素材として提供するということもできるかもしれない。
出版社様へ
電子書籍化支援プログラムを設けている。
2次利用のために必要なこと
- 構造化
- 目次データなど埋め込んでおく
- 素材の管理
- メタ情報
- 権利処理
質疑応答
- Q
- 書籍1冊あたり電子化する場合,Indesignから電子化する場合のコストはどれくらいと見積もっているか。
- A
- コストに関しては,紙の書籍を断裁し,600dpiの解像度で取って,検索用のデータを作成するなどしているが,ページあたり250円ぐらいのコストがかかっている。タイトル数は,2000タイトルぐらいは行きたいなと思っている。
- Q
- 私の大学は文系の学部が多いが,理系以外の分野のコンテンツへの投資はどのように考えているか。
- A
- (今回実験を展開する)日吉キャンパスは文系理系が両方そろっているので,理系に偏った提供をおこなおうとは考えていない。
- Q
- 文系のタイトルでどんなものを入れようと予定されているのか。
- A
- 最終的にコンテンツを提供していただくのは出版社にお願いするので,先ほども決まっているのではなくお願いをしている段階である。慶応義塾大学の図書館で貸し出しの統計を取った上で,ベースとして使用されている本を提示しているが,あくまで提示でお願いしている段階である。
- Q
- 慶応義塾はGoogleブックのデジタル化されたもので戻されたデータを活用しないのか。
- A
- デジタルされたものは著作権が切れたものしかやっていない。日本では著作権が残っているものは一切スキャンできていない。よって今回のものとは直接関わりがないが,せっかくなので結びつけて検索できるようにしたい
- Q
- 一番最初の講演で,紙の書籍をデジタル化した後に捨ててしまう図書館があると指摘していたが,紙の書籍を残すところの協定があるのか。
- A
- どのようなシステムになっているかというと,まずデジタル化したテキストがある,それを保管するリポジトリがあって,それが何アイテムがあるかが把握されていて,保管しなければいけないものが決まっている。何らかの理由で,紙の本をユーザーが必要としている場合,紙の媒体は保管しているところからユーザーに届けることができる。
- Q
- 先行事例を見ていくと,電子書籍を1タイトルを1人しか利用できないようにしている事例があるが,慶応の場合はどのような対応をとる予定か。
- A
- 技術的には同時アクセス数が1からN回まで設定できる。出版社との協定でその回数を随時設定していきたい。
- Q
- 先ほどDRMの話があったが,学術文献の引用を考えた場合文献のカット&ペーストは重要だと思うが,どのように考えているか。
- A
- 画像で行うべきかテキストで行うべきかの技術的な問題,そもそもコピーを禁止すべきだという教育的な配慮をする大学における教育の問題それに出版社のコンテンツに対する考え方の問題があると考えている。今後考えていきたい。
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以上,盛りだくさんな内容で行われていました。
以下id:librarius_I の雑感をいくつか*4。
- 実験開始といえどもまだ模索中なので注目すべき
- 目次,コメント機能が早く追加されるべき
- 今日触った端末ではまだ,目次から該当ページに飛ぶとか,資料の一部に下線やコメントを付ける機能がまだありませんでした。その辺が早めに実装されるか,あとは外部の文献管理アプリケーションと連携できたりすると幸せになれるかも。
- 割と地に足がついた実験っぽい。
- こういうサービスは「〜べきだ」論で,「印刷媒体の良さは電子資料じゃどうにもならない」とか「電子化に反対するのは世の流れに(ry」とか理念先行で議論のテーブルすら用意されないパターンとかもあり得るのですが,今回の取り組みが興味深いのは,とにかく役立つ方法,使える方法を考えましょう,やってみましょうという所から始まっているので,ともかく何らかの形にはなりそうだという予感めいたものは感じました。
長すぎるログを最後までお読み頂きまして,本当に有り難うございました。
間違いとか勘違いとか気づかれた方はこっそり教えてくだされば幸いです。
それではまた何かレポートするチャンスがあったらお会いしましょうm(_ _)m