リブラリウスと日々の記録(はてな版)

研究とかイベント運営とかの記録を淡々と。

生存報告とアンケートの記述回答欄。

ご無沙汰しております。趣味の方ではちょこちょこエントリを書いていたのですが,本業の方は,怒濤の環境変化について行けていないところがあって,半年放置の状態でした。Twitterとかご覧の方はおわかりだと思いますが,何とか生きてますので,ご安心を。


やっと落ち着いてブログを書く時間が取れるようになったので,生存報告を兼ねたエントリを一つ。ちょうど今,大学の授業は,前期と後期の端境期です。といっても,研究とか後期の準備とか,他の仕事とかであっという間に費やしてしまうので,休んでいるわけではないのですが*1。この時期になると,前期に担当した科目の学生アンケート結果がかえってきます。今日の朝は勤務先で担当した授業のアンケートを眺めておりました。見る方はドキドキしながら,まとめられた集計結果を1枚1枚拝見しております。


個人的には,その授業が上手くいったかのバロメーターは数字を選択する質問の点数平均*2が上か下かでは無く,「授業について改善して欲しい点」や「その他自由記述」などの記述回答欄がどれくらい書かれているかにあると考えています*3。自分の授業に対する手応えには,記憶が定着したかとか,具体的な技術がどれだけ身についたか*4と言うことに加えて,どれだけ学生さんとの心理的な距離を縮められるかということがかなりのウェイトを占めています。もちろん,心理的な距離を縮められるということは,なれ合いにつながる危険性もあるわけで,本当は,学生と教員が互いに緊張感を持って,教員の言っていることをきちんと疑って検証することができるような関係が築けるのが一番望ましいのです。しかし,私がやっている授業のタイプだとそこまではなかなかたどり着けず,むしろ「無関心」を「関心」へ持って行けるかどうかでバタバタもがいているというのが現実です。それでも,授業の内容に「関心」を持ってもらえるためには,私はまず教員と学生との心理的な距離がどれだけ縮められるかが最初の難関だと思っています。


さて心理的な距離を縮められることが,何で記述回答欄につながるかについて,説明が足らないので補足しておきます。それは記述回答欄は教員からの強制力やプレッシャーが働きにくいということが挙げられます。少なくとも私が担当している科目のアンケートには氏名とか学籍番号を書く欄は無いですし,基本的にアンケート記入中,教員は教室から退出して待機してます。また,学生さんにその場で封をしてもらってそのまま教務課へ持って行く(大学によっては教員が持っていくのが禁止されていて,学生さんが持参するケースもあります)ので,誰が何を書いたかというのは分からないようになっています。まあ完全な厳封はしていないので途中で開けてみようと思えば見えてしまいますが,私はルール違反だと思うのでやっていません*5。そのような状況なので,成績に反映すること自体が不可能になっています。つまり,記述回答はめんどくさければ書かない,という選択が取りやすくなっています*6


それでも記述回答を書いてきてくれると言うことは,「まあ,この人なら書いてあげても良いか」と考えてくれたということであり,改善点や授業の悪い点を指摘してくれると言うことは「この人だったら,ダメだったところを教えてあげても良いか」というレベルまで,関心を持ってもらった…と私は考えています。今回はどの授業でも記述欄が真っ白だったケースは無かったですし,私からすると「ごめんなさいごめんなさい」と謝罪しなければならないような悪い点をきちんと指摘して下さったケースもありました。正直,悪い点を指摘されると凹んだりするのですが,通常のやりとり(たとえ,試験終了後の雑談であっても)では,絶対に分からないことなので*7,真摯に受け止めて後期以降の授業で生かして参りたいと思います。皆さんどうもありがとうございました。


とりあえず板書の字を丁寧に書くことと,しゃべり方を工夫することは急務だと分かりましたので,最大限気をつけて臨みたいと思います。それ以外にもこちらで対応できる事項かつ早急な対応が必要なものがあったので,それについては早速取り組みます…。あと,教員が設定できる質問項目に「来年,受講する予定の学生さんへ一言アドバイスを」という質問を設定したのですが,豊富かつ丁寧なアドバイスが続出しておりまして,大変興味深く拝見いたしました。本当にありがとう。


ところで,こういうノウハウは教育学の文献を読み込んで身につけたとか,すごい実践者の方の話を聞いてそう思ったというわけでは全くありません。趣味の観劇やそれにまつわる役者さんや演出家さんのTwitterとかをぼっーと眺めている中で,ふと気がついたことや思いついたことをつなぎ合わせているだけです*8*9


というわけで,今月観劇予定をたくさん入れているのは,お仕事にちゃんと生かすという目的があるのですよ。決して遊び惚けているわけではありませぬ。…というまとめにならないエクスキューズを最後に書けたので,この辺でおしまいにしておきます。

*1:後期も新規開拓=初めて担当する科目が3科目あったなあと思い出して,ちょっとブルーな感じです。

*2:「この授業の内容に興味を持てましたか」,強くそう思う=5,全くそう思わない=1というタイプの質問です。

*3:そして可能であれば,ネガティブなこともきちんと書かれていることが望ましいです

*4:これは定期試験で確認しています。

*5:そういえば何故か緘印を持っているので,後期はこれを学生さんに押してもらうのも良いかなと思います

*6:なおアンケート実施前には,記述欄をできるだけ書いて欲しい,良いことも悪いことも正直に書いて下さいとお願いしていますが,誰が答えたかは分からないので,単なるお願い以上の強制力は無いと思っています。

*7:面と向かって教えてくれるのはよっぽど信頼されているか,明らかに自分で気づかなければいけない致命的なミスをやらかしているケースだと思っています。

*8:だって,観劇後のアンケートはその劇が面白くなければ絶対に書かないでしょ。そんなものをみてしまったら,私だってさっさと帰りたいですもん。もちろん予定が詰まっていてやむなく帰るということはなきにしもあらずですが

*9:この辺は研究者なのだから,もうちょっときちんと理論立てておくべきだと思うのですが,なかなかそちらまで手が回らず…。うーん。