#総合展ラジオ 第5回目と #総合展ラジオアーカイブシリーズ 第1回目を公開しました。
どうも。今井です。
図書館総合展からもうすぐ1ヶ月が経とうとしている中,振り返り記事の一つも掛けないくらい忙しい生活を送っております。有り難いことです。
さて私の思いつき半分で始まった図書館総合展を大いに盛り上げるためのラジオ番組,総合展ラジオですが,あの忙しい図書館総合展の期間中に公開収録を敢行しました。このたび,映像と音声編集が完了しました。
第5回目の紹介に入る前に,今回は下記の番組を先に紹介いたします。いろいろな事情によって,今回図書館総合展でのYouTubeによるフォーラム中継がなくなったのですが,音声だけでも様子が伝えられればと思い,総合展ラジオアーカイブシリーズというものをはじめてみました。第1回目で終わるかも知れませんが,フォーラムの音声記録がUPできればと思っています。
第1回目は2017年の図書館総合展2日目にスピーカーズコーナーBで行われた「図書館とゲームの繋がりを探る」の様子をそのままお届けします。マイクが繋がっているミキサーにPCMレコーダーを接続してそのまま録音した音声なので,とてもクリアに取れています。音声だけでも様子が伝わるかと思いますので,是非ご確認下さい。
総合展ラジオの第5回目はこのミニフォーラムの直後に,そのまま図書館ゲーム部のブースで収録したアフタートークを中心に収録しています。 ナイスなMC松野さんがミニフォーラムでは取り上げきれなかった内容を巧みに拾ってくれています。ゲストのオーレさん,高倉さん,佐藤さんも顔出しOKだったので,YouTubeではお顔が拝見できるようになっています。是非ご確認下さい。
それから,これまでの総合展ラジオの放送については,全てMP3ファイルで音声ファイルをダウンロードできるようになりました。これで通勤途中でも,台所仕事の最中でも聞きやすくなりました。是非お試し下さいませ。
お陰様で,業界人を中心にご好評頂いているようですので,総合展ラジオは次回制作が決定いたしました。ゲストさんなどはこれから調整するのですが,引き続きご贔屓にして頂ければ大変嬉しいです。
総合展の振り返り記事などはまた落ち着いたら打ち込みたいと思います。では今日はこの辺で。
(2017年版)初めて #図書館総合展 に行く予定の学生さん,職員さんへ
ども。今井です。
図書館総合展まで,あと10日を切りました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて,以前学生さんのために書いた図書館総合展入門記事ですが,2年経過したので,色々変更点がありましたので,アップデートしながら再投稿します。なお,今年は図書館総合展のブースツアーが学生さん以外でも参加可能な時間帯ができましたので,タイトルもちょっと変更してみました。
0.何のために行くのか
図書館総合展に興味を持っている方は,何のために図書館総合展に行くの,というかそれ美味しいの?という方は流石にいないと思いますが,行かない方に何しに行くのかと聞かれた時用のテンプレートをおいておきます。
真面目な話が通じる方向け
- ブースには図書館や学術情報に関わる企業や団体が沢山出展している。将来の就職活動に向けて,業界研究するため
- フォーラムを通じて図書館や学術情報に関わる最新の動向がつかめる。自分自身の知識を深めるため
- 学生向けにはブースを巡る学生ツアーが用意されていて,1人で行っても孤立しない。
- 図書館や学術業界の最先端を走っている方達とコミュニケーションを取るため
やや疑いの目を向けられた場合向け
- 図書館や学術情報に関わる企業や団体が100以上出展している。年1回しかない,業界最大手のイベントである。
- 来場者は昨年3万人を超えていて,6700平方メートルの会場に展示ブースがひしめき合っている。短時間ではまわりきれないほどの情報が詰まっている。
- 図書館総合展運営委員会は大学教員や企業の責任者が多く参加しており,そもそも怪しい集まりではない*1し,そもそも入場料は無料だし,展示ブースを巡る展示ブースツアーも参加無料で,今年から学生さんでなくても参加可能。
ノリで何とかなるパターン
- ともかく楽しそうだから,行ってきます!
1.会場への行き方
とりあえず,みなとみらい線(東急東横線)の「みなとみらい」駅を目指しましょう。JR根岸線(京浜東北線)の「桜木町」駅からも行けますが,歩きながら冬の横浜を満喫したいという人以外は,「みなとみらい」駅を推奨です。新宿から湘南新宿ラインの接続が良ければ,乗り換え含めても大体45分〜60分ぐらいで到着しますし,渋谷からだと東急東横線の特急乗り換えなしで31分です。
みなとみらいの駅からは,徒歩3分とありますが,今回の会場は展示ホールDというパシフィコの中でも一番駅から歩くポイントなので,ゆっくり歩く人は10分ぐらいは見ておいた方が安全でしょう。
横浜線で橋本・八王子方面からいらっしゃる場合は,菊名で東急東横線乗り換えが良いでしょう*2。ただし,新幹線で静岡以西からいらっしゃる方は,横浜市内の駅ならどこでも下車できる特定区間の切符をお持ちの場合が多いかと思うので,新横浜から横浜線に乗り換えてそのまま横浜まで出ましょう。新横浜からの乗り換えについては,接続が悪い場合が多いので,上記の所要時間に+20分しておけば安心して移動できるかと思います。高速バスだと横浜はYCATというターミナルに着きます。多少歩きますので,こちらも所要時間を少し余裕を持って見積もっておくと良いでしょう。
YCAT(横浜シティ・エア・ターミナル)のオフィシャルページ
パシフィコ横浜へのアクセスは公式Webにも出ていますが,お勧めは下記のWebサイト。間違えやすいポイントの説明があるだけでなく,展示ホールへおりるエスカレーターまでちゃんと指摘されています(なお総合展は展示ホールDでいちばん奥です)。
みなとみらい駅からパシフィコ横浜の「ハンドメイド・メイカーズ」会場への行き方 - ハンドメイド作家お助け隊
2.招待券のゲットの仕方
図書館総合展では,入り口の所に警備員さんがいて,入場パスをチェックしています。入場パスがないと会場には入れませんので,注意して下さい。この入場パスは入り口で招待券と引き替えになります。
えっ?招待券なんか持っていないよという方,大丈夫です。入り口にテーブルと招待券の束がおいてありますので,そこで記入してから受付に持っていけばちゃんと入れます。
ただし,住所とかを記入する欄が多いですし,色々ブースやフォーラムの事前情報が載っているので,事前にゲットしておくことをお勧めです。もし,自分の大学で,フォーラムとかブースを出している先生やポスターセッションに出展している図書館の人がいたら,「ありませんか?」と聞けば,余っているはずなのでたぶん快く譲ってくれるはずです。
招待券をゲットしたら,まずはフォーラムとブースのページを見てみましょう。たくさん数がありますね。そして,フォーラムのページを開けて,面白そうなのがないかなーと探してみることをお勧めします。もしフォーラムに参加できる時間があるならば,Webから参加登録もしてしまいましょう。おそらく,どのフォーラムも大学のレポートだったら,確実に1本は書けるネタを提供してくれますので,確実に元は取れます(ぉ。
3.名刺を作っておこう!
図書館総合展で,学生さんにお勧めしておきたいのは自分の名刺を作っておくことです。昨年も申し上げましたが「総合展の展示ブースでは名刺が貨幣代わりである」という格言があるくらいです*3。冗談はさておき,興味を持った展示ブースで色々資料を頂いてくる時には,「お名刺を頂戴できますか?」と高確率で言われますし,そうでなくても新しく知り合った方と連絡先を交換するときに大変便利ですので,名刺は持っておいて損はありません。
3.1 自作名刺のススメ
お店で1からちゃんと作ろうとすると結構高くなってしまいがちなので,名刺なんか作ったことがないよーという学生さんにお勧めなのが,自作の名刺です。
例えば,文房具屋さんに割とおいてあるインクジェットプリンタ用の名刺用紙を1セット買ってきます。とりあえずインクジェット用であれば何でも大丈夫ですが,ここではA-ONEさんの名刺用紙をお勧めしておきます。(51002とか,インクジェットプリンタで売っているのなら何でも大丈夫です。大体1000円も出せばおつりが来ます。)
A-ONEさんの用紙がお勧めなのは,「ラベル屋さん」というこの用紙専用のラベル・シール作成ソフトが無料で使えることです。インターネットとインクジェットプリンタにつながったパソコンなら,用紙さえ買ってくれば,すぐ名刺が作れます。
もし名刺に何を書いたら良いか分からないと言う学生さんは,とりあえず,ラベル屋さんのテンプレートを見ながら,色々考えましょう。こまったら,Google 画像検索で「名刺 学生」とか入れて探すと,よさげなサンプルがいくつか見つかります。
あと,最近ではネットの業者さんでテンプレートにちゃちゃっとデータを入れると安価でかつ迅速に送ってくれる業者さんもありますので,検討してみてはいかがでしょうか。名刺がないですと挨拶するよりはあって渡せた方が100倍よいです。
*【2017/11/03 21:53追記】ASKULは法人登録のハードルがあるので,デザインパックにリンクを差し替えました。*
3.2 名刺に何を書くの?
基本的には,名前と所属,それからメールアドレスはしっかり書いておきましょう。あと,TwitterとかFacebookも書ける場合は書いておいたり,興味のある分野とか自己アピールが書ける人はどんどん書いておきましょう。なお,メールアドレスは今自分が使っているスマホや携帯のアドレスをいきなり書くよりは,大学のアドレスを書いたりした方が良いかと思います。スマホや携帯のアドレスは変わってしまって連絡が取れなくなることが多くて迷惑をかけてしまう場合があるかもなので。
あと,女性とかで変なメールが来たら困るな…という方は,図書館総合展用に新しくYahoo!やGoogleでメールアドレスを取得するというのも手です。ただし,図書館総合展が終わってから,2週間くらいはちゃんとチェックしておきましょう。もしかしたら知り合った方からメールが来ているかもしれませんので。
4.会場へ入ったら何をしたら良いの?
今年は受付でガイドブック・・・ではなく,公式アプリでの配信となりました。アプリをインストールして情報を眺めながら,展示ブースを色々眺めて歩きましょう。おそらく,大学の司書課程の授業を取っているだけでは分からない,多種多様なお仕事が並んでいることが分かります。大学2〜3年生のかたは,就職のための業界研究だと思って,知らない企業でも何をやっているところなのかくらいは掴んでくることお勧めです。初めての職員さんは,こういう関連企業があるのかと言う情報収集と共に,最先端のサービスに触れて刺激を受ける場として頂ければとても嬉しいです。
ちょっと企業さんのブースはコワいなという方は,ポスターセッションを見て回りましょう。学生さんがポスター展示をしていたりしますし,色々な情報収集にはもってこいです。
それから,今年はコミュニケーションブースで大学の先生が複数ブースを出しています。私は,白百合女子大学や青山学院大学,その他非常勤先の学生さんでなくても,ウェルカムですので,会場で見かけたら声をかけて下さい。無視したら後ろから跳び蹴りをしていただいてもOKです(ぉ
それから,展示ブースに一人で行くのがコワいという方,そういう方にお勧めなのが,展示ブースツアーです。大学の教員が引率して,見ておくべきブースを紹介して回ります。今からでも申し込みは間に合いますので,一人ではコワいという方はぜひどうぞ。
時間帯によって対象者が違いますので,ご確認の上,お申し込みくださいませ。
あと,事前の情報収集は総合展ラジオがオススメです。何と第4回目まで無料で聞けます!これを聴いてワクワクしながら会場へと向かいましょう。
5.では会場でお目にかかりましょう!
図書館界の一大イベント図書館総合展。11月7日(火)〜11月9日(木),パシフィコ横浜展示ホールDで,学生の皆さんとお目にかかれるのを楽しみにしています。
それでは。
【書評のようなもの】岡部晋典編『トップランナーの図書館活用術 才能を引き出した情報空間』勉誠出版, 2017.
どうも。今井です。
0.まくら
本を作るのってとても大変なことだなと,ふと思い出したりします。もちろん著者も大変なのですが,それを支える編集さんとか営業さんとか印刷屋さんとか,大変な人たちが一杯です。枕話で宣伝をして恐縮ですが,勉誠出版さんのご厚意で出版に至った単著が絶賛発売中です。皆さま近くの書店で是非お求め下さいませ。
1.ここから本論
閑話休題。
私と共著論文を出したり,共同発表者にもなったことがある戦友,岡部晋典さん。何と私と同じ勉誠出版さんから単著を公刊いたしました。その名も『トップランナーの図書館活用術:才能を引き出した情報空間』です。
トップランナーの図書館活用術 才能を引き出した情報空間 (ライブラリーぶっくす)
- 作者: 岡部晋典
- 出版社/メーカー: 勉誠出版
- 発売日: 2017/07/31
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
発行が決まった直後に勉誠出版さんの通販で注文していたのですが,ご本人からご寄贈頂いたので,私の研究室には2冊到着しております。1冊は読みつぶして,1冊は授業での回覧用としたいと思います。感謝。
悪巧み仲間の岡部晋典さんからご著書『トップランナーの図書館活用術:才能を引き出した情報空間』勉誠出版をご寄贈頂きました(2冊あるのは自分で発注した分で2冊目は授業での回覧用にします)。巻末謝辞に名前を入れていただいたことを光栄に思います。たくさん売れて第2弾が出ますように。 pic.twitter.com/TgSswqjdBq
— 今井福司 (@librarius_I) 2017年8月28日
寄贈の御礼などを本人とやり取りしていたところ,業界内からは面白いとか以外,ちゃんと書評がないので寂しい(意訳) とのコメントを頂きました。ちゃんとした書評はこの後,各種業界誌に載るのと思いますので,このブログでは「書評のようなもの」をお届けしたいと思います。
1.本書の魅力について
本書の魅力を語る上では,以下の記事を紹介する必要があるでしょう。
「想定読者層として高校生あたりも考えていたので、緩い文体で、掘っていくと意外と内容はディープってスタイルがいいのかなと判断しました」と岡部さんは前述の記事で語っています。確かに気合いを入れて読む学術書と言うよりは,力を抜いて読める読み物の方が近いように思います。それでも,中身にはかなり力が入っています。用語への脚註もものすごい数があり,312ページの本なのに670の脚註があるという状態。
タイトルには図書館とあるので,図書館の話だけで終わっているのかと錯覚するのですが実際には,非常に話題が多岐にわたっています。知や文化の世界で最先端を走る人々の図書館や本を中心とした,各人が自分の分野で構築してきた学問だったり文化だったりを背景として語る話はとても魅力的です。
たとえとして適切かどうかは分かりませんが,自分の経験に引き付けると,大学院の研究室でコーヒーかお茶を飲みながら,先生と雑談している時に「あ,これ全部メモしておきたい」という思った瞬間に近い,岡部さん曰く「知的興奮」の感覚を覚えた次第です。
図書館の領域に無理に引き込むのではなく,きちんとインタビューイーの学問や専門分野に触れて,図書館との繋がりについて触れていくというのは大変に難しい事だと思います。インタビューの怖いところは,聞き手が話を引き出せなければ,データとして存在するはずのデータが取れないという所です。岡部さんはきちんと相手の分野について踏まえた上で,インタビューの時間配分まで決めて臨んでいます。
こうした岡部さんの行動から,私は立花隆の『ぼくはこんな本を読んできた』に収録されている「知的好奇心のすすめ」を思い出しました。インタビューする前にインタビューイーの分野について,きちんと調査し準備をした上で,インタビューに臨むといった今であってもごくごく当たり前のことが書かれている記事です。
ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、読書術、書斎論 (文春文庫)
- 作者: 立花隆
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1999/03/10
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 182回
- この商品を含むブログ (64件) を見る
当時高校生だった私は,テレビ番組や雑誌のインタビューでお手軽なものって普通にあるよなと思いながら同記事を読んでいたように記憶しています。今も昔もきちんと準備して臨むことの難しさは変わらないのでしょう。その点,岡部さんは,インタビューにあたって対象となる人々の著作や研究をきちんと踏まえ,それを適切なタイミングで用いながら,インタビューイーの話を引き出しているように感じました。
例えば,ビブリオバトルで注目される立命館大学の谷口忠大先生が,Twitterで次のように語っています。
でました~!他の本に無いライフヒストリー的なことも喋っています~!記号創発システム論の話とビブリオバトルの話両方しゃべっていますー.>>トップランナーの図書館活用術 才能を引き出した情報空間 : 勉誠出版 https://t.co/C16g4qxuW2
— Tadahiro Taniguchi (@tanichu) 2017年8月11日
それから,図書館の話に学校図書館の話がかなりの割合で出てくることも注目したいところです。研究素材で使おうとするならば,もう少し踏み込んだ発言が必要だとは思うのですが,それでも話の腰を折らない形で,最前線で活躍する人たちがどう学校図書館に向き合ってきたのかを読めるというのは,学校図書館関係者としては大変に興味深く拝見しました。
2.「トップランナー達の見た図書館のこれまで,そしてこれから」について
さて,本書の中には「トップランナー達の見た図書館のこれまで,そしてこれから」と銘打たれた,一連のインタビューを振り返った節があります。「本書の企画には〜(中略)〜研究的な意図があったことを明確にする必要があるため」学術文体を用い,本書の企画意図や得られた結果のまとめを行っています。 本書は,あくまでも各インタビューこそが主役であり,この部分は,他の書籍では「まえがき」や「あとがき」に相当する著者の振り返りに相当します。この箇所は岡部さんの本気半分,シャレ半分で書いた箇所だとも思えます。
こういう箇所に細かい突っ込みを入れるのは,野暮やマジレスとして本来は避けるべきところかもしれません。ただ,本人にツッコミを入れて良いとの許可をもらいましたので,敢えてマジレスしたいと思います。なお,私が学術系の文書でツッコミを入れるときには常体を使うので,あえて常体にここからは切り替えます。
***
本書について,研究的な意図があったとの前提を置いた上で,当該の節を検討した。以下,3点を指摘しておきたい。
1点目は筆者の提示する先行研究の限界についてである。
例えば,p. 301のリサーチクエスチョン「人々のこれまでの図書館利用の実態はどのようなものだったのか」で筆者は「近年,図書館利用や図書館等機関がが発信するデータの量的利用分析は盛んに行われている。しかし,本企画のような利用者そのものへの質的調査の試みはエアポケットの状態である」と述べている。筆者は続いて,利用の実態について研究者らを対象とした情報行動分析はあるが,本書のような(=利用者そのものへの)調査は見当たらないと指摘している。
ただ実際には,糸賀らによる都立図書館を対象とした利用行動調査や,Lisa M.GivenとGloria J.Leckieによるカナダの公共図書館を対象とした利用者行動調査がある。これらは本書が行ったようなインタビュー調査ではなく,前者が観察及びアンケート調査,後者が"seating sweeps"と呼ばれる観察法を用いた調査ではあるため,本書が取り扱ったアプローチとは異なるものの,これらの先行研究の調査では何が達成できなかったかを検討する必要があったのではと考える。
公共図書館における館内閲覧量測定の有効性(慶應義塾大学学術情報リポジトリ)
“Sweeping” the library: Mapping the social activity space of the public library1 - ScienceDirect
2点目は,「調査」と「研究」の用語の使い分けについてである。p. 302において,筆者は「質的調査」と「質的研究」という用語を用いている。調査と研究についてはsurveyとresearchの言葉の使い分けにも現れるように,使用する際には区別が必要な用語である。おそらくその後の表現では一貫して「調査」が用いられていることから,後者の用語は「質的調査」の誤りだと思えるが,もし使い分けがされているのであればご指摘頂きたい。
3点目は,本研究の限界についてである。研究手法がインタビュー調査である以上,調査を行うにあたっては相手が調査を受け入れることが前提となる。よって,この調査ではあくまでも過去の図書館体験について語っても良いとした被験者に調査が限られることになる。また本書の被験者については,ほぼ図書館について好意をもち肯定的な見解を持つ被験者が多く,反感や否定的な見解を持つ被験者はほとんどいなかった。p. 309で筆者自身が指摘しているが,仮にp. 300でいうような「インターネットがあれば図書館が不要だ」との見解を持つ被験者が存在したのであれば,利用者の状況はさらに明らかにできたのではないかと思われる*1。
***
以上が疑問点です。重箱の隅をつついた感が否めないので,もっと本質的なツッコミは他の方へ譲りたいと思います。ただこういうツッコミどころが残っているのは本書のマイナス点ではなく,むしろこのようなツッコミどころを残していることこそが重要だと私は思います。
本書を読んだ高校生や大学1年生が,この本に対して,私ならこうやってこういう人に調査するのに,もっとこうやれば上手く調査できるのにと,本調査手法を改良して,研究を深め,学術論文を執筆するようなことになるのを,わざと狙っているのではと私は考えています。
とりあえず4000文字を超えたので,ご寄贈御礼の書評のような物としてはここで収めておきたいと思います。岡部さん,ご寄贈有り難うございました。また悪巧みいたしましょう。(巻末広告最終ページ右上に掲載されている書籍の著者より)
*1:ただし,この点は著者が「この人の話を伺いたい」とした原動力とは反する可能性があるため,仮に可能な条件が揃ったところで調査が実行可能だったかどうかは疑問が残る
#総合展ラジオ 第2回目公開しました。
どうも。今井です。
本当は月刊の予定だったのですが,諸事情によりまして図書館総合展を盛り上げるためのラジオ番組,総合展ラジオの第2回目が先週に引き続いて公開となりました。
今回は丸善雄松堂のエドワード増井さんをゲストに招いて,図書館総合展の海外展開について,たっぷりと語って頂いています。海外の図書館の話とかはなかなか聞けるチャンスは無いかと思いますので,ぜひご視聴下さい。今回はたっぷり喋ってもらうために今井はわざと登場しておりません。
www.youtube.comなお,今回からミニコーナーを開始しています。ラジオと言えばコーナーがあるものだと思っている私としては,どうしてもやってみたかった企画なので,実現できて嬉しいです。耳から聞くとより役立つ,ラジオにピッタリのコーナーです。35分近辺から聞けますので,お忙しい方もそこだけは聞いて頂けると大変嬉しいです。今回の放送を含め,コーナー番組はあと2回放送できるようストックを作っています。
それから冒頭に,番組本体とは別に時間を取りました。番組の中でアメリカのテキサス州ヒューストンの話題を取り上げておりますが,各種メディアで報じられている通り,ハリケーン「ハービー」で,ヒューストンを含むアメリカ南部が大きな被害を受けております。収録日は8月8日でハリケーンの上陸前のことではありますが,公開が本日になったことを踏まえて,冒頭にお悔やみと復興祈念の挨拶を挿入致しました。今回のハリケーンの犠牲者の方々ならびにご遺族,関係者の方々へ謹んでお悔やみ申し上げますとともに,一日も早い復興を祈念申しあげます。
次回放送は9月下旬頃に…できたらよいですね。反応などお待ちしております。
#総合展ラジオ 第1回目公開しました。
どうも。今井です。
本体ブログの方ではお久しぶりです。
さて,早速ですが先日第0回目を配信しました図書館総合展のラジオ番組,総合展ラジオ。おかげさまで第1回目の作成がOKとなりまして,本日ようやく第1回目を配信しました。
本当はライブ放送したかったのですが,諸事情によりましてYouTubeにそのままファイルをアップすることで対応致しました。
【2017/09/04 12:12修正:YouTubeの公開チャンネルが違っていたので訂正しました。前の動画も残してありますので,そのままご覧頂けます。】
youtu.be記念すべき第1回目の放送はオープニングトークに引き続きまして,青山学院大学の野末俊比古先生をお招きして,
なお,本ブログをご覧の方に追加情報を付与しておきますと,第2回目の収録は既に終わっておりまして,現在出演者チェック中です。8月の配信予定でしたが9月上旬頃の見込みです。2回目には文字で読んでもよく分からないけれど,音で聞くと明日から役立つタイプの情報発信も含めております。
第2回目の配信もどうぞお楽しみに。番組のメールアドレスは sou510radio@gmail.com です。皆さまからのお便りをお待ちしております。
#総合展ラジオ 【6月21日19:00〜】図書館総合展のラジオ局を始めます。
どうも。今井です。
本務ブログでは久しぶりのポストです。
早速ですが,私のお仕事の一つである図書館総合展で,またひとつ新たな取り組みを始めます。 その名も,
総合展ラジオ
です。
YouTubeやAmeba Fresh,ツイキャスの動画配信が盛んな時期にもかかわらず,あえてラジオで勝負したいと思います。
「総合展にはまだ行ったことないなぁ」「会場に行ったりYouTube動画で記録をみる時間はないんだよなぁ」という方々に向け,また開催前の情報提供の場として,総合展の会期が始まるまでのあいだ,図書館総合展を大いに盛り上げるためのラジオ番組として色々仕掛けて参りたいと思います。
図書館総合展に関係した情報を中心にしつつ,総合展への関心とは関係なく聞いても面白い放送を目指します。 YouTubeLiveで収録した音声を中継放送した後,YouTube上のアーカイブとして残します。 また,スマートフォンなどで聞きやすいように図書館総合展のWebページでMP3形式のファイルも同時に公開する予定です。
よって,中継の時間に慌てて聞かなくても大丈夫となっておりますが,制作者としては反応が返ってきていただければ,次回の番組制作の励みともなりますので,Twitterなどで #総合展ラジオ のハッシュタグで感想を呟いて頂ければ幸いです。
初回放送は
6月21日(水)19:00より以下のチャンネルで行います。
ぜひぜひ聞いてみてください。
【御礼とまとめ】2016年を振り返って
どうも。今井です。
2016年もお世話になりました。今年は諸事情により(厳密には欠礼ではありません…。詳細は趣味編の5をご覧下さい。)年賀状を書かないこともありまして,少し落ち着いた時間を過ごしております。何年かできていませんでしたが,今年の振り返りを少しだけ。なお,番外編として趣味バージョンもまとめてこちらに掲載します。
【お仕事編】
- 単著『日本占領期の学校図書館』を出しました。
色々ありましたが,これが一番のトップニュースです。博士課程に在席しているときの夢の一つが博士論文を書いて単著出版だったので,夢が叶いました。この夢のために勉誠出版のOさんを始めとして,数多くの方のご尽力を戴いたことをここに改めて御礼申しあげたいと思います。
出版してから色々至らなかったところを反省したりもしましたが,現時点での出し切れるものはここに集結させられたと思います。ただし研究上のストックを全て使い果たしている状況でもありますので,何とか来年はこの続きを少しでも進めたいと思います。色々,他分野でよくして頂くことはあるのですが,学校図書館史を専門としてこその全てだと思っています。
- Library of the Year 2016のプレゼンターを担当しました。
ブログではすっかり御礼を申しあげそびれていたのですが,第18回図書館総合展において開催されたLibrary of the Year 2016で,東京学芸大学学校図書館運営専門委員会のプレゼンターを担当して参りました。優秀賞とオーディエンス賞の2つを戴き,プレゼンターとしては本当にホッとしております。未だに動画を見返すと当日のことを思い出して足がすくみます。会場に到着した後はまだ良いのですが,当日の事前打合せでは明らかに表情が死んでいて,緊張しきりだったことばかり思い返されます。でも,自分の発表で喜んで頂ける人がたくさんいたのであれば,そんなことはどうでも良いと思います。
本プレゼンについての感想やコメントはIRIのページに掲載して戴いているので,そちらをご確認下さい。
- 宮城県で研修会講師をやってきました。
ついこないだと思っていたら,何と2017年1月21日(木)の出来事でした…。学校図書館だけでなく,むしろ教育課程の話を中心にさせて頂きました。これを担当したときには,教育課程論を現在受け持っていない自分が担当して良いのか…と思っていましたが,色々ご縁がありましてその不安も解消されることになりました。来年早々に知識のアップデートを計る必要がありそうです。
宮城県教育委員会で研修会講師を担当します。 - リブラリウスと日々の記録(はてな版) - カーリルタッチ!を使ったオープンキャンパス企画をやってきました。
たぶん,今年単著出版に続いて一番時間をかけたのがこの企画だったと思います。本企画の実現並びにPRにご協力頂いた,ブレインテックの皆さま,白百合女子大学入試広報課の皆さま,事務局長室の皆さま,およびスマホ企画有志の学生さんには深く深くお辞儀して御礼申しあげます。アフターフォローがいまいちできていませんが,もっともっと面白くできる感触だけはハッキリと覚えています。
- 2016IASLで発表してきました。
国際大会の発表は博士課程にいる間だけで他にチャンスはないだろうな…と勝手に思っていましたが,本務先のサポートもありまして,学校図書館の国際大会で白百合女子大学教育プログラム推進助成での成果を発表してくることができました。何年かぶりの英語発表でしたが,最低限のラインは維持できたかと思います。ただこの程度を当たり前に積み重ねていかないとと決意を新たにしたのも確かです。共著者のアン・マクナイト先生,岩政伸治先生,田畑邦治先生にはチャンスを戴いたことを改めて御礼申しあげます。加えて,英語校正のエディテージ,資金のサポートをして頂いた白百合女子大学の教育プログラム推進助成にも深く感謝申しあげます。
- SLiiiCサマーワークキャンプ2016を開催しました。
お仕事編の部活動の1つである,SLiiiCサマーワークキャンプも白百合女子大学での2016年度の開催を無事進めることができました。イベント全体の報告書は年明けの出版を目指して作業進行中です。毎年違う題材で,他の団体がやらないような内容を毎年取り組むというコンセプトでここまで続けられたのも,ご支援や応援をして下さっている皆さま,ならびに代表を始めとする度量の深いスタッフのおかげです。ありがとうございます。
SLiiiCサマーワークキャンプについては,Togetterにこうやってまとめがしっかり残っています。学校図書館関連の研修会は1年経ったら存在すら忘れられてしまうものが少なくない中で,こうしてネットの世界に記録を毎年残していけることは歴史を研究しているものとしてできる精一杯の抵抗だと思います。
- 図書館総合展2016を無事開催できました。
今年はよく見たらブログ記事を上げていなかったのですが,今年は図書館総合展で,これだけの仕事をしていたようです。
・学生ツアー
・自大学ブース出展
・コラーニングフォーラム
・Library of the Year2016
・メーカーズ・ラボ「ウェルカムボード」
一緒に参加してくれる学生さん達の楽しそうな顔に励まされて,3日間走り抜けました。来年もさらに改良を加えてあの場に挑みたいと思います。 - 日本図書館情報学会の研究大会でシンポジウムのパネリストを担当しました。
第64回日本図書館情報学会研修会で「学校図書館への研究的アプローチ」というテーマでパネリストを担当してきました。レビューということは,誰でも当たり前のように取り組んでいることで,今更発表の価値があるのかとも思いました。でも,パネリスト,コーディネーターの皆さまに迷惑をかけながらも何とか乗りきることができました。感謝です。スライドはGoogleスライドで公開中です。
第64回日本図書館情報学会研究大会 日本図書館情報学会: Japan Society of Library and Information Science
- 司書教諭の教育実践シンポジウムで発表してきました。
立教大学の中村百合子先生主催のシンポジウム「司書教諭資格付与科目の教育実践を検討する」で司書教諭講習科目「情報メディアの活用」の話題提供をして参りました。FBにも書きましたが,私個人としては,発表中は楽しかったという感触があったのですが,振り替えると自分の勘や思い込みで語っている部分が多くあったので,楽しいだけではダメだなと反省しています。
- 勉強会@中央線NEOで発表してきました。
10番目に書きましたが,刺激的で楽しかったのでもっと上でも良いかと思うのが,こちらのイベントでした。アウェイで発表して批判や建設的なコメントをもらえることは,準備負担や当日の負担があっても継続していくべきだと思いました。発表会場にいち早く着いてしまって,会場周辺の街を歩いているうちに迷子になりかけたこととか,会場にタブレット端末を置いてきてしまって翌日取りに帰ったことですら良い思い出です(汗)。
他にもたくさんの仕事をやってきたのですが,ひとまず思い出に残っている順から挙げていくとこの10個に収まるかなと思います。そうそう,本務先や非常勤先での学生さんとの講義や演習でのやり取りは個々のエピソードが書けないため,ここには載せませんでしたが,今年一番の時間を割いた活動であることは言うまでもありません。おつきあい頂いている学生さん達には感謝感謝です。
【趣味編】
- 24公演,46ステージの舞台を拝見しました。
例え「仕事しないで演劇ばかり観て」と陰口をたたかれようが,今年も演劇をたくさん観てきました。昨年比10ステージプラスですが,12月に1公演も行けなかったのはちょっと悔やんでいるところです。
演劇やコンサートやプロレスの観劇・鑑賞・観戦記録(2010年以降) - リブラリウスと趣味の記録
Corichさんで舞台芸術アワードというのを開催していたので,そちらにも投票してきました。結果として,劇団ショウダウンさんと劇団壱劇屋さんに集中しましたが,今年拝見したどのステージも終了後には大満足であった事を申し添えておきます。どんなものでも何かを作れる人はスゴい人達です。
- Raspberry Pi2にVolumioを入れて遊んでました。
授業に使うつもりで放置していたRaspberry Pi 2にVolumioというOSを入れてUSBオーディオアダプターを付けたら,良質なジュークボックスになりました。もうそろそろ2ヶ月ですが,まだ普通に電源を入れて枕元で動かしています。
- 大阪から来たチラシ配付ご一行様のチラシをもらってきました。
劇団壱劇屋さんの大阪公演しかしない2作品のチラシを東京でもらうという,今から考えても訳が分からない企画にそのまま乗っからせて頂きました。結果,観に行かないつもりだったシャドウトラフィックと独鬼の2つを観に行くことになったので,PRというのは奥が深いと思いました(小並感)。
渋谷に向かっています。近くにいるよ、という方がもしいらっしゃいましたら、お気軽にリプライください!秋公演の出来立てホヤホヤチラシを持ち歩いてます!(西分)#チラシ旅
— 壱劇屋 (@ichigekiya) 2016年7月5日 - 舞台上で切られてきました。
劇団壱劇屋さんの「独鬼」アフターイベントで殺陣講座というのがあり,舞台上で切られてきました。あっさり書いていますが,高校時代に演劇部を辞めてから20年間,舞台に立つのは1つの夢だったので,個人的には無茶苦茶嬉しかったのです。 - PS4+FF15に年末休みを溶かしました。
全文略。タイトル通りです。イグニス良いですなぁ。
【まとめ】
- 夢が叶った1年でした。感謝。しかも,一人じゃできないことを様々な助けを借りて成し遂げられました。感謝感謝。
- とはいえ,夢が実現したらまたやってみたいことが沸々と。やる気がある間の時間があまりにも足らない感じです。
- というわけで,来年どうするか考えているのですが,研究方面強化+趣味充実の方針を立てつつ,余計な負担になっているモノをちゃんと整理していこうと思っています。
ではでは,残り僅かですが,皆さま良いお年を。2017年もどうぞよろしくお願いします。